本業務は,山口県田布施町馬島の養殖場跡池に平成16年11月に造成された実験干潟(代替覆砂材としてHiビーズと各種の割合で混合した浚渫土を使用)にアサリとアマモを移植し,これらを定期的にモニタリングすることにより,代替覆砂材がアサリとアマモの生息に及ぼす効果を定量的に評価することを目的として実施しました。
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山口県田布施町馬島の車海老養殖跡池(1号池) |
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アサリとアマモの生息状況,底質環境の変化(1.経時変化,2.代替覆砂材の有無,種類による違い)の把握 |
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平成16年11月実施
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5×5mの実験区を25分割して設けた各区画(面積1×1平方メートル)に,ラッカー・スプレーで青色に着色した成貝(平均殻長22.4mm,平均重量3.4g)を1区画当たり2kgの密度(約600個体)で移植しました。なお,成貝は大分県豊前海産のものを使用しました。 |
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青色に着色した成貝
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平成17年3月実施
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1区画の面積が1平方メートルとなるように5×5mの実験区を碁盤状に分割して,栄養株の移植を行う区画を図のように配列しました。移植は,養殖場跡池近隣の天然アマモ場から採取した栄養株を1区画当たり20株の密度となるように調整し,栄養株の地下茎をU字型の針金で固定する方法(固定法)で実施しました。 |
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栄養株の移植区画
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栄養株の固定
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モニタリング調査は平成17年1月から平成18年1月までの期間,原則として2ヶ月に1回の頻度で実施しました。 |
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モニタリング調査の項目及び方法、数量
項目
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方法
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数量
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アサリの生息状況 |
・成貝の生残率 |
ダイバーによる採取・計数 |
5区画×5実験区×7回 |
・成貝の殻長 |
デジタルノギスによる計測 |
アマモの生息状況 |
・栄養株の株密度 |
ダイバーによる目視観測 |
9区画×5実験区×6回 |
・栄養株の最大草丈 |
底質環境 |
・粒度組成 |
底土の採取及び室内分析 |
1区画×5実験区×2回 |
・地盤支持力 |
土壌硬度計による計測 |
25区画×5実験区×7回 |
・水素イオン濃度 |
海底直上水の採取及びpH計による計測 |
1区画×5実験区×5回 |
・溶存酸素 |
海底直上水の採取及びDO計による計測 |
・酸化還元電位 |
底土の採取及びORP計による計測 |
・生物化学的酸素要求量(COD) |
底土の採取及び室内分析 |
1区画×5実験区×5回 |
・強熱減量 |
・全窒素 |
・硫化物 |
1区画×5実験区×1回 |
・クロロフィルa |
1区画×5実験区×5回 |
・フェオ色素 |
・栄養株の葉上堆積浮泥 |
葉上堆積浮泥の採取及び室内分析 |
3実験区(現地盤区、Hiビーズ50%・80%区)×1回 |
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各項目の調査時期
項目
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H17
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H18
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1月
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3月
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5月
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6月
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7月
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9月
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11月
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1月
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アサリの生息状況 |
・成貝の生残率 |
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・成貝の殻長 |
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アマモの生息状況 |
・栄養株の株密度 |
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・栄養株の最大草丈 |
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底質環境 |
・粒度組成 |
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・地盤支持力 |
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・水素イオン濃度 |
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・溶存酸素 |
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・酸化還元電位 |
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・生物化学的酸素要求量(COD) |
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・強熱減量 |
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・全窒素 |
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・硫化物 |
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・クロロフィルa |
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・フェオ色素 |
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・栄養株の葉上堆積浮泥 |
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注)地盤支持力は,アサリ実験区内の全区画(125区画)で測定を行いました。
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ここでは,アサリ・アマモの生息状況に関する調査結果について紹介します。 |
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移植から1年2ヶ月後(平成18年1月)における成貝の生残率は23.1%でした。a |
成貝の生残率は,8ヵ月後(平成17年7月)から10ヵ月後(同年9月)の期間に最も急激に減少しました。b |
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全調査区画(25区画)における成貝の平均生残率の推移

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移植から1年2ヶ月後現在(平成18年1月)で,成貝の生残率が最も高い値を示した実験区は現地盤区であり,以下,Hiビーズ50%区,Hiビーズ80%・20%区,浚渫土100%区の順でした。 |
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移植から1年2ヵ月後現在(平成18年1月)における成貝の実験区別平均生残率
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成貝の成長量は,移植から1年2ヶ月後(平成18年1月)までで4.4mmでした。 |
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全調査区画(25区画)における成貝の平均殻長の推移
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移植から4ヵ月後(平成17年3月)以降では,成貝の殻長は現地盤区で最高値,Hiビーズ50%区で最低値を記録しました。 |
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移植から1年後(平成17年11月)と1年2ヵ月後(平成18年1月)の調査では,現地盤区とHiビーズ50%・80%区において天然稚貝の生息が確認されました。 |
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各実験区における天然稚貝の生息状況
実験区
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天然稚貝の個体数(個体)
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平成17年11月
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平成18年1月
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現地盤区 |
9
(7.1〜14.5mm)
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5
(8.1〜10.0mm)
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Hiビーズ50%区 |
5
(7.1〜9.9mm)
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1
(8.0mm)
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Hiビーズ80%区 |
3
(7.6〜14.2mm)
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5
(6.8〜20.0mm)
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注:)表中の( )内の数値は殻長を表す
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Hiビーズ80%区に生息していた天然稚貝(平成18年1月撮影)
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栄養株の株密度は,調査期間を通じて,現地盤区で最高値を記録しました。 |
現地盤区の栄養株は,移植から10ヵ月後(平成18年1月)には,移植時の2倍程度の株密度になりました。 |
浚渫土100%区では,移植から3ヵ月後(平成17年6月),Hiビーズ80%区では4ヵ月後(平成17年7月),Hiビーズ20%・50%区では6ヵ月後(平成17年9月)に栄養株は完全に消失しました。 |
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各実験区における栄養株の平均株密度の推移
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株密度が増加した現地盤区の栄養株(平成18年1月撮影)
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現地盤区の栄養株の最大草丈は,移植から2ヵ月後(平成17年5月)から6ヵ月後(同年9月)にかけて急激に短くなりましたが,その後は伸長傾向に転じました。 |
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各実験区における栄養株の平均最大草丈の推移
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草丈が短くなった現地盤区の栄養株(平成17年9月撮影)
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現地盤区以外の実験区で栄養株が枯死したのは,流れが弱く,浮泥が葉上に堆積して光合成が阻害されたことが原因の一つであると推察されました。このため,平成18年2月に実験干潟内に水流を発生させるための装置(水中ポンプ等)を設置しました。さらに,3月にアマモの再移植を行い,今後もモニタリングを継続する予定です。 |
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